あなたの夢はなんですか?
夢を失った僕の経験。
動物が大好きだった僕の夢。
幼い頃は、動物園の飼育係。
イルカショーのお兄さん。
ムツゴロウ王国への移住。
獣医さん。
ほぼ、動物関連だった。
子供だった僕の夢に、親が介入することもなく、
自然にそういう道をたどるんだと思って疑わなかった。
しかし、進路が現実味を帯びてくる、高校時代になってから、
親の態度が急変する。
我が家は、両親が自営業を営んでいたので、
(職種については、あえて伏せる事にする)
長男である僕が、後を継ぐのがごく自然なことだと、
いや、継いでもらわねば困るという事である。
高校卒業後は、普通に大学に進学するものかと思っていた。
が、両親は専門学校に進むことを厳しく推してきた。
僕は進学の事が頭にあったので、学業には力を入れていて、
あわよくば、推薦で大学進学を決めようと目論み、
成績もすごく良かった。
(自慢話だと受け止めないでね)
まずは、そこを崩されたのだ。
高校が進学校だったので、周りの友人は皆進学が決定。
僕は、望みもしない専門学校に決まって、茫然となった。
その頃は親に逆らえる程、知恵がまわらなかった。
云われるまま。指図されるがまま。
絶望的な気分で高校を卒業し、茫然自失としたまま、
専門学校の二年間を送る。
その後は、二年あまり、親元を離れて修行の道についたが、
いかんせん、どれだけ時間がたっても、やる気がおこらない。
やる気がないから、技術も身につかない。
僕はいつの間にか、落ちこぼれた人間になっていた。
20歳を過ぎてからは、虚しさを紛らわすために酒におぼれた。
身体のなかに、埋められない洞ができたような、
云いようのない虚無感が、うつ状態を招いた。
死ぬことを考えるようになるかも知れない。
そういう考えに悩まされるようになったころ、
ようやく、親に反撃を開始した。
勿論、酒の力を借りこそである。
僕は仕事を辞め、自力で小さな会社を探し、就職してしまった。
親は泣き喚いたが、完全に無視した。
しかしだ。
就職したとしても、所詮、一時的な逃げ道にすぎない。
やりたいことは他にあるのだ。
夢は、会社員ではないのだ。
でも、夢ってなんだっけ?
今からでも、叶うものなの?
それが判らなくなっていた。
抗うつ剤を飲みながら、とりあえず、お金だけは稼いだ。
会社は、ブラックよりな会社で、
結局、その仕事も長続きはしなかったが、
運よく僕は、家族に恵まれた。
結婚できたのだった。
うつ病は完治していないが、少しはまともな状態まで回復した。
しばらく、就労センターで社会復帰の訓練を受けて、
観光写真を撮るバイトを6年続けた後、
現在の病院清掃に転職した。
それも、本当の夢ではないが、
写真の仕事が僕を変えてくれたのだ。
元々カメラは趣味だったし、
その仕事は仲間にも恵まれて楽しかった。
生涯続けたかったが、これ以上僕の我がままで
家族に迷惑をかける訳にはいかない。
息子の大学進学が現実的になってきたので、
今の職場に転職した。
まだフルタイムで働ける状態ではないので、
雇用状態はパートだ。
奥さんが頑張ってくれているので、
息子の夢は実現可能になった。
家の事も極力することで、赦してもらっている。
甘えだと云われても仕方ないが、
今の僕は満足している。
息子が望むことを、叶えてあげること。
彼の夢が、僕の夢になった。
つまらねーな、と云われるかも知れないが、
家族ができて、親になれた。
それに僕は救われたのだ。
今、夢を諦めようとしているひとがいるなら、
僕は云いたい。
諦める必要はない、と。
今はダメだというなら、保留にしておいてもいい。
精神だけは病んでくれるな。
あらゆる可能性が消えてしまう。
そう、可能性だけは、信じて欲しい。
捨てないで欲しい。
あなたの中に流れる可能性という小さな流れが、
どんなに大きな海につながっているか、
それは誰にも判らないのだから。
あなたの夢はなんですか?
紫鳥でした。